なぜ、サイズが合っているのに靴が合わないのか|足の側にある理由
靴が合わないとき、多くの方はサイズを疑います。ワンサイズ上げてみる、幅広の木型を選んでみる。それでも解決しないことがあります。
サイズ表示は足長(かかとからつま先までの長さ)と足囲を基準にした一次元の情報です。一方、足と靴の適合は立体の問題です。長さと幅が合っていても、踵の形やアーチの落ち方が噛み合っていなければ、靴の中で足は動きます。
前足部に合わせると、踵が余る
前足部の幅に合わせて靴を選ぶと、踵側に空間が残る。歩くたびに踵が抜け、靴の中で足が前へ滑る。つま先が当たるので、さらに大きいサイズを選ぶ。
これが、「サイズは合っているのに、なぜか合わない」の正体のひとつです。
足の側で確認したい三つのこと
| 所見 | 何が起きているか | 靴への影響 |
|---|---|---|
| 扁平足(アーチの低下) | 歩くたびにアーチが落ち、足が横に広がり、踵が内側へ倒れる | 前足部がきつくなり、踵の保持が効かなくなる |
| 絶壁踵(踵後方の張り出しが乏しい) | アキレス腱から踵にかけてのラインが垂直に近い | 靴の後ろに空間が残り、踵が抜けやすい |
| 踵部脂肪体の菲薄化 | 踵のクッションが薄くなり、支えと衝撃吸収を同時に失う | 踵まわりが緩む。硬い路面での痛みが出る |
※ 三つは併存することがあります。どれが主かは診察と超音波検査で確認します。
日本人の足について言えること、言えないこと
足の形の個人差は、人類学・人間工学の分野で古くから検討されてきました。日本人成人304名の足を計測した研究では、足軸の位置、母趾球の傾き、母趾球部の幅、甲の高さという四つの要素で個人差が説明でき、七つの型に分かれることが報告されています(河内/人類誌, 1989)。靴のフィッティングの実務でも、前足部の幅に対して踵が相対的に小さい、踵後方の丸みが乏しいといった傾向が指摘されています。
ただし、これらを「日本人の足はこうである」と一括りにできるほど、条件をそろえた集団間の比較研究が蓄積されているわけではありません。同じ「日本人の足」の中に、これだけの幅があります。世代差や生活様式の変化による影響も指摘されています。
当院がお伝えできるのは一般論ではなく、目の前の一足の足がどうなっているかです。傾向の話は入口にすぎません。
踵の脂肪は、減ります
踵部脂肪体(Heel Fat Pad)は、線維組織の隔壁で細かく仕切られた小部屋に脂肪の粒が詰まった構造をしています。この仕切りがあることで、脂肪は圧力を受けても横に逃げず、その場で衝撃を受け止めます(前道ら/臨床整形外科, 2024)。
この構造は、加齢、肥満、リウマチ性疾患、糖尿病などと関連して機能が低下することが整理されています(Chang ら/J Foot Ankle Res, 2022)。ステロイド注射の既往も局所の脂肪萎縮の要因として挙げられます。ヒールの常用による繰り返しの負荷も、臨床上しばしば背景に見られます。
注意が必要なのは、厚みの数値だけでは判断できないという点です。健常成人でも12〜29mmという広い幅があり、9mm以下がHFPSを示唆しうるとする報告がある一方、健常者と差がなかったとする報告もあります(同)。
そのため、荷重時と非荷重時の厚みの比(圧縮率)をあわせて見ます。踵の痛みを持つ方では、荷重時の深層の潰れが大きく、除荷後の戻りが乏しいことが報告されています(Maemichi ら/Foot Ankle Orthop, 2024)。「どれだけ厚いか」ではなく「潰れ方と戻り方がどう変わっているか」を見るという考え方です。
「合わない」は、測れば説明がつくことがあります
靴が合わないことを、我慢が足りないせいだと考える必要はありません。靴の質が悪いせいとも限りません。足の側の形態と、靴の設計が噛み合っていないだけということがあります。
当院では、超音波(エコー)で踵と足部の脂肪体の厚みと圧縮率、そして踵の後方の骨形態と皮下組織を、足底圧分布測定で荷重の集中と傾きを確認します。そのうえで、履けなかった靴を実際に履いた状態でフィッティングを評価します。
リスク・副作用について
FOOT-COUTURE の各施術は、いずれも自由診療(公的医療保険適用外)です。記載の料金はすべて税込です。
シンデレラフィット注射(踵)
注入部位の内出血、腫れ、痛み、感染、しこり(結節)の形成、左右差、注入した製剤の移動(マイグレーション)が生じる可能性があります。まれに血管内塞栓が報告されています。効果および持続期間には個人差があり、効果を保証するものではありません。また、お持ちのすべての靴が履けるようになることをお約束するものではありません。
インソール(極薄パターンインソール/ドクターオーダーメイドインソール)
装着初期に違和感、圧迫感、靴の中のフィット感の変化が生じることがあります。摩耗した場合は作り替えが必要です。すべての靴に適合するものではありません。
費用
診察・検査は初診料5,500円、再診料2,200円、カウンセリング料(エコー検査代含む)13,200円です。施術は、シンデレラフィット注射(踵)が初回22,000円・2回目以降38,500円、パンプス・革靴用 極薄パターンインソールが22,000円、ドクターオーダーメイドインソールが55,000円、前足部パッドサポートが5,500円(いずれも税込・2026年8月時点)。
内訳と選び分けの考え方はFOOT-COUTURE の費用と、選択肢の考え方をご覧ください。
使用する医薬品・医療機器について(未承認医薬品等に関する情報)
シンデレラフィット注射(踵)にはNeuramis®(架橋ヒアルロン酸製剤)を用います。踵部・足底部への使用について、国内で薬事承認を受けていない製剤です。医師の判断と責任のもとで行う自由診療であり、次の情報をあらかじめご確認ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 未承認である旨 | 本製剤は、国内で薬事承認を受けていない未承認の医薬品・医療機器です |
| 入手経路 | 医師個人の責任のもとで輸入(医師個人輸入)しています |
| 国内の承認医薬品等の有無 | 国内で承認されているヒアルロン酸注入剤はありますが、いずれも顔面のしわ等に対する適応であり、踵部・足底部への使用について承認を受けたものはありません |
| 諸外国における安全性等に係る情報 | 韓国MFDS(食品医薬品安全処)の承認を受けた製剤で、Neuramis® Deepは欧州CEマークを取得しています。いずれも踵部・足底部への使用について承認を受けたものではありません。重大な副作用として、血管内塞栓、感染、遅発性の結節形成が報告されています |
本施術は、国内の医薬品副作用被害救済制度・医療機器等副作用被害救済制度の対象外となります。
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当院について
参考文献
河内まき子. 日本人の足型の個人差の分析. 人類誌. 1989;97(3):373-388.
Chang AH, Rasmussen SZ, Jensen AE, Sørensen T, Rathleff MS. What do we actually know about a common cause of plantar heel pain? A scoping review of heel fat pad syndrome. J Foot Ankle Res. 2022;15:60.
前道俊宏, 松本正知, 熊井司. 踵部脂肪体褥の機能解剖学的特徴とHeel Fat Pad Syndromeの理解. 臨床整形外科. 2024;59:271-276.
Maemichi T, Matsumoto M, Tsutsui T, Ichikawa S, Okunuki T, Tanaka H, Kumai T. Functional morphologic changes of the heel fat pad and plantar fascia in patients with heel pain during weightbearing and nonweightbearing. Foot Ankle Orthop. 2024;9(2):24730114241247824.
監修:菊池 守(リカルナクリニック)