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足の健康コラム

かかとの脂肪はなぜ減るのか|足底脂肪パッドの構造と、超音波での評価

かかとには、歩くたびに繰り返される衝撃を吸収するための脂肪組織があります。踵部脂肪体(しょうぶしぼうたい/Heel Fat Pad, HFP)と呼ばれる構造です。

この記事では、それがどういう構造で、なぜ減るのか、そして減っているかどうかをどう確かめるのかをご説明します。

ただの「脂肪の塊」ではありません

踵の脂肪パッドは、単に脂肪が溜まっている場所ではありません。

線維組織の隔壁(セプタ)によって細かく仕切られた小部屋の中に、脂肪の粒が詰まっているという構造をしています。この仕切りがあることで、脂肪は圧力を受けても横に逃げず、その場で衝撃を受け止めることができます。

踵は歩行時に最初に接地する部位であり、荷重と非荷重が頻回に繰り返されます。この構造は、その繰り返しに耐えるためのものです(前道ら/臨床整形外科, 2024)。

なお、この脂肪体は浅層(microchambers)と深層(macrochambers)という性質の異なる2層から成ることが指摘されており、単一の均質な組織ではありません。

なぜ減るのか

踵部脂肪褥症候群(Heel Fat Pad Syndrome, HFPS)は、衝撃吸収能が低下することから生じると考えられています。低下を招くのは、脂肪パッドそのものの萎縮と、線維組織の隔壁の破綻です。

HFPSは、加齢、リウマチ性疾患、糖尿病、肥満としばしば関連すると整理されています(Chang ら/J Foot Ankle Res, 2022)。このほか、ステロイド(コルチコイド)注射の既往も要因として挙げられます。

要因 何が起きるか
加齢 脂肪が減り、残った組織も硬くなる
肥満 単位面積あたりの荷重が増える
関節リウマチなどの膠原病 皮下組織の萎縮を伴うことがある
糖尿病 神経障害により過負荷に気づきにくい
ステロイド注射の既往 注射部位の脂肪が局所的に萎縮する

急性の外傷によって生じることもあれば、強いヒールストライク(かかとからの強い接地)が繰り返されるような慢性的な使いすぎによって生じることもあります。

加齢によって足全体が硬くなる

加齢に伴う足の変化については、軟部組織の硬さが増していく傾向が報告されています(Menz/Gerontology, 2015)。

脂肪が減るだけでなく、残っている組織も硬くなっていく。衝撃を「吸収する」のではなく「そのまま伝える」足になっていく、というイメージです。

「フローリングを裸足で歩くと骨が直接当たるように痛い」という訴えは、この状態をよく表しています。

どのくらい減っていると「萎縮」なのか

超音波(エコー)検査では、踵の脂肪組織の厚みを測ることができます。ただし、厚みの数値だけで診断が決まるわけではありません。

スコーピングレビューでは、次のように整理されています(Chang ら/J Foot Ankle Res, 2022)。

健常成人の踵部脂肪パッドの厚みには12〜29mmという広い幅がある

超音波で計測した厚みが9mm以下であればHFPSを示唆しうるとする報告がある

一方で、HFPSの方と健常者で厚みに差がなかったとする報告もある

そのため、厚みのみを診断基準とすることには限界がある

そこで重要になるのが、荷重時と非荷重時の厚みの比(圧縮率)です。ある報告では、非荷重時19.8±2.9mm・荷重時12.3±2.9mm、圧縮率0.60±0.09という数値が示されています。「どれだけ厚いか」ではなく「潰れ方がどう変わっているか」を見るという考え方です。

前道らも、静的な評価だけでなく荷重変化のような動的な評価がHFPSの評価手法として重要であると述べています。

上に挙げた数値はいずれも文献上の目安です。当院では、これらを参考にしながら、痛みの部位・経過・歩行の状態と画像所見が一致するかを含めて総合的に判断しています。

エコーとレントゲンの役割は違います

エコーは針を使わないため痛みがなく、放射線被ばくもありません。その場で画像を見ながら、ご自身の脂肪がどの程度残っているかを確認できます。

なお、レントゲンでは骨の状態はわかりますが、脂肪パッドそのものは写りません。「レントゲンで異常なし」と言われた踵の痛みが続いている場合、この評価が抜けている可能性があります。

症状の特徴

典型的には、踵骨の後方、体重がかかる部分の下に痛みと圧痛が生じます。そして、次のような状況で悪化します。

立っているとき

長時間の体重負荷

硬い路面での歩行

「靴を履いていれば楽だが、室内で裸足になると痛い」という訴えは、この特徴と一致します。足底腱膜炎との見分け方については「その踵の痛み、本当に足底腱膜炎ですか」で解説しています。

まず行われるのは保存的な治療です

踵部脂肪褥症候群に対しては、まず保存的な治療が行われます。

適切な靴の選択

インソールまたはヒールカップ

テーピング

徒手療法

安静と冷却

消炎鎮痛薬による疼痛治療

衝撃の強い運動など、症状を強める活動を控えること

当院でも、まずこれらの選択肢からご提案します。オーダーメイドインソール、歩行診断・歩行指導なども行っています。

これらを続けても改善しない場合に、失われた脂肪そのものを補う選択肢——足裏脂肪移植や足裏クッション補充注射(コラーゲン誘導タイプ)、足裏クッション補充注射(ヒアルロン酸タイプ)——を検討していただく流れになります。足裏脂肪移植を選択される場合は、術後4週間の免荷期間が必要です。

「減っているかどうか」は、測れば分かります

かかとの痛みが続いている場合、まず脂肪がどの程度残っているかを確認するところから始めていただければと思います。

構造も原因も、この記事に書いたとおり一般論としては整理されています。しかしご自身の踵がどの状態にあるかは、測ってみないと分かりません。

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当院について

リスク・副作用について

足裏脂肪移植は自由診療(保険適用外)です。費用は両側880,000円・片側660,000円(いずれも税込、術後用オーダーインソール作成費用を含む)で、このほかに初診料5,500円・カウンセリング料13,200円・術前検査13,200円・術後用物品セット15,000円・術後消毒セット1,500円・抜糸処置5,500円・術後診察の再診料2,200円×4回がかかります。脂肪を採取する部位には内出血・筋肉痛のような痛み・腫れ・皮膚の凹凸・色素沈着が、移植する部位(足裏)には生着不全・石灰化・感染・血腫・左右差・シスト(しこり)の形成・術後の一時的な腫れ・痛み・内出血が生じる可能性があります。少なくとも術後1週間は足底の痛みが続き、術後4週間の免荷期間が必要です。本治療は患者様ご自身の脂肪組織を用いるもので、医薬品・医療機器を留置するものではありません。なお、足裏クッション補充注射(コラーゲン誘導タイプ)(Sculptra®/ポリ-L-乳酸製剤)と足裏クッション補充注射(ヒアルロン酸タイプ)(Neuramis®/架橋ヒアルロン酸製剤)に用いる製剤は、足底部への使用について国内で薬事承認を受けていない未承認医薬品・未承認医療機器であり、医師個人の責任のもとで輸入したものを使用しています。同一の効能・効果で国内承認を受けた医薬品はありません。諸外国における承認状況・安全性情報を含む四項目の詳細は「足裏脂肪移植の費用」ページに記載しています。

参考文献

Chang AH, Rasmussen SZ, Jensen AE, Sørensen T, Rathleff MS. What do we actually know about a common cause of plantar heel pain? A scoping review of heel fat pad syndrome. J Foot Ankle Res. 2022;15:60.

前道俊宏, 松本正知, 熊井司. 踵部脂肪体褥の機能解剖学的特徴とHeel Fat Pad Syndromeの理解. 臨床整形外科. 2024;59:271-276.

Menz HB. Biomechanics of the Ageing Foot and Ankle: A Mini-Review. Gerontology. 2015;61:381-388.

監修:菊池 守(リカルナクリニック)