COLUMN

足の健康コラム

膠原病に伴う足裏の脂肪萎縮|関節リウマチ・全身性強皮症と足の痛み

膠原病の治療を続けている方から、「関節の症状は落ち着いてきたのに、足の裏の痛みだけが残っている」というお話を伺うことがあります。

その痛みは、関節そのものではなく、足裏のクッションが失われていることによるのかもしれません。

関節リウマチと踵の脂肪パッド

踵部脂肪褥症候群(Heel Fat Pad Syndrome)は、加齢、リウマチ性疾患、糖尿病、肥満としばしば関連すると整理されています(Chang ら/J Foot Ankle Res, 2022)。

関節リウマチの方の足の痛みは、関節の変形や滑膜炎として説明されることが多いのですが、足裏のクッションの問題が併存している可能性があります。

ステロイド注射との関係

とくに、ステロイド注射を繰り返してきた経過がある場合は注意が必要です。ステロイドには局所の脂肪組織を萎縮させる作用があり、注射した部位の脂肪が凹んでしまうことがあります。

前足部への複数回のステロイド注射は、足底脂肪パッド萎縮の要因のひとつとして挙げられています(Minteer ら/Plast Reconstr Surg, 2018)。

痛みを抑えるための治療が、結果としてクッションを減らしてしまうという状況です。関節の症状が落ち着いた後に足裏の痛みだけが残る背景には、これが関係していることがあります。

関節リウマチと足の変形についても、あわせてご覧ください。

全身性強皮症における足底脂肪パッドの萎縮

全身性強皮症(SSc)では、足底の脂肪パッドの萎縮が起こることが知られています(Jeon ら/Clin Exp Rheumatol, 2020)。進行性で、生活に支障をきたす病態とされています。

この病気の線維化という性質により、足の皮下組織が萎縮し、そこには足底の脂肪パッドも含まれます。足底の脂肪パッドは、中足骨頭部や踵の上で衝撃を吸収し、体重を支える機能を担う特殊な構造です。

脂肪パッドの萎縮は足の痛みを引き起こし、移動や日常生活の活動を制限します。それは仕事や収入にも影響し、心理的な負担も大きいと報告されています。

自家脂肪移植についての報告

全身性強皮症に伴う足底の脂肪パッド萎縮に対して、自家脂肪移植を行った経験が報告されています。

自家脂肪移植は、患者様自身の組織を用いる低侵襲な軟部組織再建の方法として広まってきました。ただし、足底の脂肪パッド萎縮に対する使用については、報告はまだ限られているのが現状です。

報告されている手技では、腹部または大腿から主に脂肪を採取し、遠心分離をかけて精製したうえで移植する方法(Coleman法)が用いられています。当院の手技も、脂肪を採取し遠心分離で精製してから移植するという点では同じ考え方です。

ただし術後の免荷条件は異なります。この報告では術後2週間の部分荷重が指示されていますが、当院では移植した脂肪の生着を優先し、術後4週間の免荷期間(専用サンダルの着用)をお願いしています。

この報告の位置づけ

なお、この報告は限られた症例数についてのレター(短報)であり、比較対照を置いた試験ではありません。「膠原病に伴う脂肪萎縮に脂肪移植が有効である」と確立された段階ではないことを、前提としてご理解ください。

慎重に判断すべき理由

膠原病をお持ちの方の場合、次の点を踏まえた判断が必要です。

確認する点 なぜ確認が必要か
免疫抑制薬・ステロイドの使用状況 感染や創傷治癒のリスク評価が必要
末梢循環の状態 レイノー現象や血流障害があると適応が変わる
線維化の進行度 移植した脂肪の生着に影響する可能性がある
疾患活動性 全身状態が安定していることが前提

当院では術前に足の血流検査と血液検査を行い、これらとあわせて適応を判断します。さらに、報告されている症例数がまだ限られており、確立された標準治療ではありません。

主治医の先生と連携させていただくことが前提になります。現在の治療内容やコントロール状況を確認したうえで、適応を慎重に判断します。すべての方に適応となるわけではありません。

受診の際にお持ちいただきたいもの

  • お薬手帳(免疫抑制薬・ステロイドの使用歴が分かるもの)
  • 主治医の先生からの紹介状・診療情報提供書(お持ちの場合)
  • これまでの血液検査の結果(お持ちの場合)
  • 普段履いている靴

これらがあると、適応の判断がより正確になります。お持ちでなくても受診は可能です。

「関節の病気だから仕方がない」で終わらせない

膠原病の診療では、どうしても全身の状態や関節の管理が優先されます。足裏の痛みは、その中で後回しになりやすい症状です。

しかし、足裏の痛みは歩く距離を縮め、活動量を落とし、生活の質に直結します。

原因が「クッションの喪失」にあるのであれば、それに対して検討できる選択肢があります。治療を受けるかどうかは別として、足裏に何が起きているかを確認しておくこと自体に意味があります。

確認の方法

当院では、超音波(エコー)で足裏の脂肪の厚みや腱・筋膜の状態を確認します。エコーは針を使わず、放射線被ばくもありません。

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当院について

リスク・副作用について

足裏脂肪移植は自由診療(保険適用外)です。費用は両側880,000円・片側660,000円(いずれも税込、術後用オーダーインソール作成費用を含む)で、このほかに初診料5,500円・カウンセリング料13,200円・術前検査13,200円・術後用物品セット15,000円・術後消毒セット1,500円・抜糸処置5,500円・術後診察の再診料2,200円×4回がかかります。脂肪を採取する部位には内出血・筋肉痛のような痛み・腫れ・皮膚の凹凸・色素沈着が、移植する部位(足裏)には生着不全・石灰化・感染・血腫・左右差・シスト(しこり)の形成・術後の一時的な腫れ・痛み・内出血が生じる可能性があります。少なくとも術後1週間は足底の痛みが続き、術後4週間の免荷期間が必要です。本治療は患者様ご自身の脂肪組織を用いるもので、医薬品・医療機器を留置するものではありません。免疫抑制薬やステロイドを使用中の方は、感染や創傷治癒に関するリスクの評価が別途必要です。

参考文献

Jeon FHK, Langridge B, Ruston J, Griffin MF, Butler PEM. Autologous fat grafting for plantar fat-pad atrophy in systemic sclerosis. Clin Exp Rheumatol. 2020.

Chang AH, Rasmussen SZ, Jensen AE, Sørensen T, Rathleff MS. What do we actually know about a common cause of plantar heel pain? A scoping review of heel fat pad syndrome. J Foot Ankle Res. 2022;15:60.

Minteer DM, Gusenoff BR, Gusenoff JA. Fat Grafting for Pedal Fat Pad Atrophy in a 2-Year, Prospective, Randomized, Crossover, Single-Center Clinical Trial. Plast Reconstr Surg. 2018;142(6):862e-871e.

監修:菊池 守(リカルナクリニック)