COLUMN

足の健康コラム

60代からの足裏の痛み|「歳のせい」と諦める前に知ってほしい3つのこと

知ってほしいこと①——足裏の脂肪は確実に減る(科学的事実)

「足の裏が痛いけど、もう歳だから仕方ない」——そう思っていませんか。確かに加齢は足裏の変化に影響しますが、「仕方ない」で済ませてよい問題ではありません。

スイス・バーゼル大学のMenzが2015年にGerontology誌に発表したレビューでは、加齢に伴う足の変化が系統的にまとめられています。足裏の脂肪パッドの萎縮、軟部組織の硬化、関節可動域の減少、筋力の低下、皮膚の菲薄化——これらの変化は確実に進行します。

ピッツバーグ大学のMinteerらが2018年にPlastic and Reconstructive Surgery誌に発表した2年間のランダム化クロスオーバー臨床試験によると、60歳以上の方の約30%に足裏の脂肪パッド萎縮が認められています。つまり、60歳を超えると3人に1人は足裏のクッションが薄くなっている可能性があるのです。

さらに、早稲田大学の前道俊宏らが2024年に臨床整形外科誌に発表した研究では、踵部脂肪体の線維中隔(脂肪を区切る仕切り構造)が加齢とともに変性するメカニズムが解明されました。線維中隔のコラーゲンが変性すると、脂肪を保持する力が弱まり、衝撃吸収能力が徐々に失われていくのです。

大切なのは、これらの変化が「自然だから対処できない」のではなく、「メカニズムがわかっているからこそ対処できる」ということです。

知ってほしいこと②——インソールだけでは限界がある

足裏の痛みに対して、まず試されることが多いのがインソール(中敷き)です。インソールは痛みの軽減に一定の効果がありますが、それだけでは限界がある場合もあります。

Changらが2022年に発表したスコーピングレビューでは、踵部脂肪パッド症候群に対する粘弾性ヒールカップやテーピングの効果を検証したランダム化比較試験(RCT)が存在しないことが指摘されています。つまり、インソールやヒールカップが広く使われている一方で、その科学的根拠は限定的なのが現状です。

一方、イタリア・パヴィア大学のNicolettiらが2014年にThe Foot誌に発表した研究では、脂肪注入(リポフィリング)とカスタムインソールの併用が報告されています。足底の軟部組織損傷により歩行困難となった4名の患者さんに対し、2回の脂肪注入を行い、各注入後にカスタムインソールを作製しました。その結果、4名全員が松葉杖なしでの歩行を回復しました。

この研究が示唆しているのは、インソールは外から支える「対症療法」として価値がある一方で、失われた脂肪クッションそのものを補う「根本的なアプローチ」と組み合わせることで、より良い結果が期待できるということです。

知ってほしいこと③——再生医療という選択肢(2年間持続のエビデンス)

「足裏の脂肪が減ったら、もう元には戻らないのでは?」——そんな疑問に、研究データが明確な答えを示しています。

ピッツバーグ大学のMinteerらが2018年に発表した2年間のRCTでは、自家脂肪移植を受けた患者さんの痛みと足の機能が有意に改善し、その効果が2年間にわたって持続したことが確認されました。これはクロスオーバーデザインという厳密な研究手法を用いた結果であり、エビデンスレベルの高い知見です。

さらに注目すべきは、同じピッツバーグ大学のGusenoff JAらが2019年にAesthetic Surgery Journal誌に発表した研究結果です。この研究では、脂肪移植後に真皮(皮膚の深い層)の厚さが6ヶ月で有意に増加し、その効果が24ヶ月間持続していたことが報告されました。興味深いことに、移植した脂肪そのものは徐々に吸収されていくにもかかわらず、皮膚の質的な改善は持続していました。これは、脂肪に含まれる幹細胞や成長因子がコラーゲンの産生を促進し、皮膚組織の若返りをもたらしている可能性を示唆しています。

また、ピッツバーグ大学のRuaneらが2019年にPlastic and Reconstructive Surgery誌に発表した研究では、MRIによる3次元体積解析を用いて、脂肪移植後の足裏の体積(p=0.04)と厚み(p=0.008)が有意に増加していることが客観的に確認されました。

諦める前に——行動のきっかけに

足裏の痛みを放置することは、歩行機能の低下につながります。歩行機能の低下は、フレイル(加齢に伴う虚弱)やサルコペニア(筋肉量の減少)のリスク因子として知られています。つまり、足の痛みを「歳だから」と放置することは、全身の健康に影響する可能性があるのです。

逆に、足の健康を維持することは、健康寿命の延伸につながります。痛みがあるから歩かない、歩かないから筋力が落ちる、筋力が落ちるから転倒リスクが上がる——この悪循環を断ち切るためにも、足の痛みへの早めの対処が重要です。

まとめ

60代からの足裏の痛みには、科学的に解明された原因があり、エビデンスに基づいた治療選択肢が存在します。「歳のせい」と諦めてしまう前に、まずは現在の足の状態を正確に把握することが第一歩です。

足の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度RiCarna Clinic(リカルナクリニック)にご相談ください。超音波やMRIを用いた精密な評価をもとに、お一人おひとりの状態に合わせた治療プランをご提案いたします。

※本コラムは一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状がある方は必ず医師にご相談ください。