TREATMENT
治療についてPRP療法(多血小板血漿療法)
ストレッチやインソールを続けても改善しない足底腱膜炎。ステロイド注射で一時的に楽になっても、数ヶ月で痛みが戻ってくる——そんな経験はありませんか。
PRP療法(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿療法)は、患者様ご自身の血液から成長因子を濃縮し、損傷した組織に注入することで修復を促す再生医療です。痛みを一時的に抑える対症療法とは異なり、組織そのものの再生を促すアプローチとして、近年注目を集めています。
当院では、超音波診断装置による精密な評価のもと、慢性化した足底腱膜炎や難治性の足の痛みに対して、PRP療法を含めた再生医療の選択肢をご提案しています。
PRP療法とは——ご自身の血液で組織の修復を促す再生医療
PRP療法は、患者様ご自身の血液を少量採血し、専用の機器で遠心分離することで血小板を高濃度に濃縮した「多血小板血漿(PRP)」を作製し、患部に注入する治療法です。
血小板には、組織の修復を促進するさまざまな成長因子(PDGF、TGF-β、VEGF、EGFなど)が豊富に含まれています。これらの成長因子が損傷した腱や靭帯に働きかけ、コラーゲンの産生を促進し、血管新生を誘導することで、組織の修復・再生を促します。
ステロイド注射との根本的な違い
足底腱膜炎の治療でよく用いられるステロイド注射は、炎症を強力に抑えることで痛みを軽減する「対症療法」です。即効性がある一方、効果は一時的であり、繰り返し注射を行うと脂肪パッドの萎縮や腱の脆弱化を招くリスクがあることが報告されています。
一方、PRP療法は、損傷した組織そのものの修復を促す「組織修復療法」です。効果の発現には数週間を要しますが、組織の構造的な改善を目指すため、より持続的な効果が期待できます。
| ステロイド注射 | PRP療法 | |
| 作用メカニズム | 炎症を抑制(対症療法) | 成長因子による組織修復の促進 |
| 効果の発現 | 数日以内(即効性) | 2〜4週間で徐々に改善 |
| 効果の持続 | 数週間〜数ヶ月 | 中長期的な改善が期待される |
| 反復使用のリスク | 脂肪パッド萎縮・腱の脆弱化 | 自己血液のため副作用リスクが低い |
PRP療法のエビデンス——RCTが報告する治療成績
PRP療法の足底腱膜炎に対する有効性は、ランダム化比較試験(RCT)によって検証されています。
Sawanらの2023年RCT(エジプト)
エジプトのSawanらが2023年にEgyptian Journal of Anaesthesia誌に発表したRCT(対象60名)では、保存療法で改善しなかった難治性足底腱膜炎の患者をPRP群とステロイド注射群に無作為に割り付け、治療成績が比較されました。
その結果、痛みの評価指標(VAS:Visual Analogue Scale)および足の機能評価指標(FFI:Foot Function Index)のいずれにおいても、PRP群がステロイド群よりも有意に優れた結果を示しました。特に治療後6ヶ月の時点では、PRP群の改善がより顕著であったと報告されています。
(出典:Sawan ZH, et al. Analgesic efficacy and functional outcome in refractory cases of plantar fasciitis treated with PRP: RCT with corticosteroids injection. Egypt J Anaesth. 2023;39:477-487.)
慢性足底腱膜炎に対する脂肪注入のRCT
また、ピッツバーグ大学のGusenoff BRらが2022年にPlastic and Reconstructive Surgery誌に発表したRCTでは、慢性足底腱膜炎の患者に対する穿通脂肪注入により、腱膜厚の有意な減少(p<0.05)と、痛みの改善の12ヶ月間の持続(p<0.01)が確認されています。
当院では、これらのエビデンスに基づき、患者様の症状の程度やライフスタイルに応じて、PRP療法と脂肪移植を含めた再生医療の選択肢をご提案しています。
(出典:Gusenoff BR, et al. Perforating fat injections for chronic plantar fasciitis: A randomized, crossover clinical trial. Plast Reconstr Surg. 2022;149:297e.)
このような方に適しています
- 足底腱膜炎と診断され、ストレッチやインソールなどの保存療法を3ヶ月以上続けても改善しない方
- ステロイド注射を受けたが効果が一時的で、痛みが再発している方
- ステロイド注射の副作用(脂肪パッドの萎縮など)が心配な方
- 衝撃波の治療を行ったが痛みが残っている方
- 足裏脂肪移植に関心はあるが、4週間の免荷期間(ダウンタイム)が取れない方
- 自分自身の血液を使った自然な治療を希望される方
- 慢性的なかかとの痛みにより、日常生活や仕事に支障をきたしている方
※PRP療法の適応は、超音波検査による腱膜の状態評価や、これまでの治療経過をもとに医師が判断いたします。すべての方に適応となるわけではありません。
治療の流れ
- step 01 カウンセリング・超音波検査
- 足の痛みの部位や経過、これまでの治療歴を詳しくお伺いします。超音波診断装置(エコー)を用いて、足底腱膜の厚さ(4mm以上は慢性化の指標とされます)と脂肪パッドの状態を「見える化」し、PRP療法の適応を判断します。必要に応じてレントゲンやMRIによる精密検査もご案内します。
- step 02 採血
- 患者様の腕の静脈から約20〜60mlの血液を採取します。通常の血液検査と同程度の採血量です。
- step 03 PRP作製
- 採取した血液を専用の遠心分離機にかけ、血小板を高濃度に濃縮したPRP(多血小板血漿)を作製します。所要時間は約15分です。
- step 04 超音波ガイド下での注入
- 超音波診断装置で患部をリアルタイムに確認しながら、作製したPRPを足底腱膜の損傷部位に正確に注入します。エコーガイド下で行うことにより、腱膜の最も病変が強い部分にピンポイントで到達でき、周囲の神経や血管への損傷リスクを最小限に抑えます。
- step 05 術後説明・帰宅
- 注入後の注意事項をご説明し、そのままご帰宅いただけます。施術当日から歩行は可能です。
他の治療法との比較
足底腱膜炎に対する治療は複数の選択肢があります。当院では、患者様の症状の程度やライフスタイルに合わせて、段階的な治療をご提案しています。
| PRP療法 | ステロイド注射 | 体外衝撃波 | 足裏脂肪移植 | |
| メカニズム | 成長因子による 組織修復促進 | 炎症の抑制 (対症療法) | 衝撃波による 血流改善・鎮痛 | 自家脂肪による クッション再建+ 組織再生 |
| 侵襲度 | 低い (採血+注射) | 低い (注射のみ) | 非侵襲 (体外照射) | 中程度 (脂肪吸引+注入) |
| ダウンタイム | ほぼなし (当日歩行可) | ほぼなし | ほぼなし | 約4週間の免荷 |
| 効果持続 | 中長期的な改善 が期待される | 数週間〜 数ヶ月 | 個人差が 大きい | 2年間の効果持続 がRCTで報告 |
| 反復リスク | 自己血液のため 低リスク | 脂肪萎縮・ 腱の脆弱化 | 特になし | — |
| 適する方 | 保存療法無効の 慢性腱膜炎 | 急性期の 強い痛み | 注射に 抵抗がある方 | 脂肪パッド萎縮 を伴う方 |
PRP療法で改善が見られた方でも、足裏の脂肪パッドの萎縮が進んでいる場合には、さらに根本的なクッション再建として足裏脂肪移植をご案内することがあります。当院では、検査データに基づいて段階的な治療計画をご提案いたします。
ダウンタイムと術後の経過
PRP療法は、足裏脂肪移植と比較してダウンタイムが短いことが特徴の一つです。
- 施術当日
- 歩行は可能です。ただし、激しい運動や長時間の立ち仕事は避けてください。注入部位に軽い痛みや違和感を感じることがあります。
- 翌日〜1週間
- 注入部位に軽度の腫れや内出血が見られることがありますが、通常は数日で軽快します。日常生活は通常通り送っていただけます。入浴は翌日から可能です。
- 2〜4週間後
- 成長因子の働きにより、組織の修復が徐々に進みます。この時期から痛みの改善を実感される方が多くなります。
- 1〜3ヶ月後
- 組織の修復がさらに進み、効果がより明確になります。経過観察のための再診をお願いしています。超音波検査で腱膜の状態変化を確認します。
- 3〜6ヶ月後
- 治療効果の評価を行います。改善が十分でない場合は、追加のPRP注入や他の治療法(脂肪移植など)の検討をご提案することがあります。
リスク・副作用について
PRP療法は患者様ご自身の血液を使用するため、アレルギー反応や異物反応のリスクは極めて低い治療法です。ただし、医療行為である以上、以下のリスクや副作用の可能性があります。
- 注射部位の痛み・腫れ:注入後に一時的な痛みや腫れが生じることがあります。通常は数日で軽快します。
- 内出血:注射部位に内出血が生じることがあります。1〜2週間で消失します。
- 感染:極めて稀ですが、注射に伴う感染のリスクがあります。清潔操作を徹底して対応しています。
- 効果の個人差:PRP療法の効果には個人差があり、すべての方に同等の改善が得られるわけではありません。
- 一時的な痛みの増悪:注入直後に一時的に痛みが強くなることがあります。これは成長因子による組織修復の反応であり、通常は数日で改善します。
当院では、形成外科専門医としての経験と足病診療の専門知識に基づき、これらのリスクを最小限に抑える対策を徹底しております。ご不安な点はカウンセリング時にお気軽にご相談ください。
料金
| 施術名 | 料金(税込) | 特徴・概要 |
| PRP療法(1回) | 132,000円 | ご自身の血液から成長因子を濃縮し、足底腱膜の損傷部位に注入。組織の修復を促進します。 |
| PRP療法(3回コース) | 330,000円 | 効果を高めるため、一定間隔で3回の注入を行うコース。経過に応じて注入間隔を調整します。 |
※上記は自由診療(保険適用外)となります。
※料金は予告なく変更となる場合がございます。
※初診時にはカウンセリング料・検査料が別途かかる場合がございます。詳しくはお問い合わせください。
よくあるご質問
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PRP療法は何回受ける必要がありますか?
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症状の程度により異なりますが、まずは1回の注入で経過を観察し、必要に応じて追加の注入を検討します。一般的には1〜3回の注入で効果を評価します。注入間隔は通常4〜6週間程度です。
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ステロイド注射を受けた後でもPRP療法は可能ですか?
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可能です。ただし、直近のステロイド注射から一定期間(通常4〜6週間)を空けてから実施することが推奨されます。ステロイドの抗炎症作用がPRPの組織修復効果に影響を与える可能性があるためです。詳しくはカウンセリング時に医師にご相談ください。
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糖尿病がありますが、PRP療法を受けられますか?
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糖尿病の方でもPRP療法を受けていただける場合がありますが、血糖コントロールの状態(HbA1c値など)を確認した上で適応を判断いたします。HbA1cが7.0%を超える場合は、まず血糖コントロールの改善を優先していただくことがあります。
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効果はどのくらいで実感できますか?
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ステロイド注射のような即効性はありません。成長因子による組織修復が進むまでに2〜4週間程度かかり、1〜3ヶ月かけて徐々に改善を実感される方が多くなります。
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PRP療法と足裏脂肪移植、どちらを選べばよいですか?
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PRP療法は足底腱膜の組織修復を促す治療であり、主に慢性足底腱膜炎に対して用いられます。一方、足裏脂肪移植は失われた脂肪パッド(クッション)を再建する治療です。超音波検査の結果、腱膜の肥厚が主な問題であればPRP療法を、脂肪パッドの萎縮が著しい場合は脂肪移植を、両方の問題がある場合は段階的な併用をご提案しています。
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施術時の痛みはどの程度ですか?
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注入時に針を刺す際の痛みがありますが、局所麻酔を併用することで痛みを軽減できます。施術時間は採血からPRP作製、注入まで合わせて約45分〜1時間程度です。
まずはカウンセリングにお越しください
足底腱膜炎の痛みが長引いている方、ステロイド注射の繰り返しに不安を感じている方は、ぜひ一度RiCarna Clinic(リカルナクリニック)にご相談ください。
超音波診断装置による腱膜と脂肪パッドの精密な評価をもとに、PRP療法が適応となるかどうかを含め、お一人おひとりの状態に合った治療プランをご提案いたします。保存療法から再生医療まで、あらゆる選択肢の中からベストミックスな治療をご提供することが、当院の使命です。