COLUMN

足の健康コラム

足裏脂肪移植の効果はどれくらい持続するのか

高額な治療を検討するとき、費用と並んで気になるのが「どのくらい持つのか」だと思います。数ヶ月で元に戻ってしまうのなら、判断はまったく変わってきます。

ここでは、なぜ持続が期待できるのかという仕組みの部分から、他の注入治療との違いまでを整理します。

「吸収される充填物」ではなく「定着する自分の組織」

足裏脂肪移植と、ヒアルロン酸などの注入治療との最も大きな違いはここにあります。

製剤を注入する治療は、時間とともに体内に吸収されます。たとえば足裏クッション補充注射(ヒアルロン酸タイプ)の効果は約6〜12ヶ月程度とされ、効果を維持するには繰り返しの注入が必要になります。

一方、脂肪移植で入れるのはご自身の脂肪組織です。移植された脂肪が周囲の血管とつながり、生きた組織として定着すること(生着)ができれば、長期にわたる効果が期待できます(効果には個人差があります)。異物ではないため、異物反応が起こらないことも特徴です。

なお、移植する脂肪はそのまま注入するのではありません。採取後に遠心分離にかけ、水分・不純物・遊離した油分を除去して健全な脂肪細胞のみを濃縮したうえで、エコーガイド下に適切な層へ層状に注入します。この工程自体が、生着率を左右する要素です。

「少なくとも2年間」効果が続いたという報告があります

足底の脂肪パッド萎縮に対する脂肪移植については、2年間の前向き無作為化クロスオーバー試験が報告されています。この試験では、痛みの改善が追跡期間である2年間続いたとされています(効果や持続期間には個人差があります)。

Minteer DM, Gusenoff BR, Gusenoff JA. Fat grafting for pedal fat pad atrophy in a 2-year, prospective, randomized, crossover, single-center clinical trial. Plast Reconstr Surg. 2018;142(6):862e-871e.

生着すると、クッション以上の変化が起こります

移植した脂肪は、単に物理的なクッションとして機能するだけではありません。

研究では、脂肪移植後に脂肪層だけでなく真皮(皮膚)の厚みも増加することが確認されています。硬くなっていた足裏の皮膚が柔軟性を取り戻していく、という変化です。

この変化は、移植した脂肪に含まれる細胞成分が周囲の組織に働きかけることによるものと考えられていますが、詳しい仕組みはまだ確立されていません。ボリュームを補うだけでなく、組織そのものの質に変化が生じうる点が、この治療の特徴です。

「移植した脂肪は数ヶ月で戻る」という報告があります

ここは、正直にお伝えしておきたい点です。

上記のクロスオーバー試験では、中足骨頭の真下で直接測った脂肪の厚みが術後に増加したことが報告されています。ただしその厚みは、グループ1で術後2ヶ月、グループ2で術後6ヶ月の時点で移植前の値に戻ったとされています(Minteer ら/Plast Reconstr Surg, 2018)。にもかかわらず、痛みの改善は追跡期間である2年間続いたとされています。

「厚みが戻ったのに、なぜ痛みは改善したままなのか」——この矛盾に見える現象について、同じ研究グループがその後2つの説明を示しています。

① MRIで見ると、立体的な体積は増えている

ピッツバーグ大学のグループは、脂肪移植の前後でMRIを撮影し、足の脂肪を3次元の体積として評価しました(Ruane ら/Plast Reconstr Surg, 2019)。

17名(男性6名・女性11名)に対し、片足あたり平均5.8ccを注入。術後6ヶ月の時点で、組織の厚み(p=0.008)と体積(p=0.04)がいずれも増加していたと報告されています。

一点で測ると戻って見えても、立体で捉えると脂肪は残っている——というのが、この研究の示唆です。

② 皮膚そのものが厚くなっている

もう一つの説明が、皮膚の変化です。

無作為化クロスオーバー試験において、超音波で脂肪パッドと真皮(皮膚)の厚みを測定した研究があります(Farber ら/Aesthet Surg J, 2019)。平均年齢63±6歳、平均BMI 26.0±4.6の23名が対象です。

その結果、術後6ヶ月の時点で真皮の厚みが増加していたことが報告されています。著者らは、脂肪移植が皮膚の質を改善し、それが「移植した脂肪が失われた後も症状の改善が続く」ことの説明になりうると考察しています。

つまりこの治療は、脂肪を足すだけの治療ではなく、足裏の組織そのものを変える治療である可能性が示されているということです。詳しくは「2年間のランダム化比較試験でわかっていること」で解説しています。

持続を左右する最大の要因は「術後4週間」

ここが最も重要です。移植した脂肪が生着するかどうかは、術後4週間をどう過ごすかに大きく左右されます。

移植した脂肪が血管とつながって定着するまでの間、足裏という体重のかかる場所で強い圧力を受け続けると、脂肪が潰れて定着できません。これが生着不全で、十分な効果が得られない原因になります。

そのため術後4週間は、屋外・屋内を問わず、移植部位を浮かせるフェルトと専用サンダルを着用し、患部に強く体重をかけない生活を送っていただきます。歩行時は土踏まずにフェルトを貼ったうえでサンダルを履きます。術後5週目以降、フェルトを外し、術後用のオーダーメイドインソール(手術費用に含まれます)を使用して全荷重歩行を開始します。

「どのくらい持つか」は、施術の技術だけでなく、この4週間の過ごし方によっても変わります。逆に言えば、患者様ご自身が結果に関与できる部分でもあります。

効果には個人差があります

同じ治療を受けても、経過には個人差があります。移植した脂肪がどの程度定着するかは、脂肪の状態、足裏にかかる負荷、生活習慣、体重の変化などの影響を受けます。

「必ず一生持つ」といった保証ができる治療ではありません。カウンセリングでは、期待できることと、そうでない部分の両方をご説明します。

他の治療との比較

治療法 効果の持続 ダウンタイム
足裏脂肪移植 生着すれば長期にわたる効果が期待できる(個人差あり) 約4週間の免荷
足裏クッション補充注射(コラーゲン誘導タイプ) 効果は徐々に現れ、比較的長期の変化が期待できる(個人差あり) 免荷期間は不要・当日歩行可
足裏クッション補充注射(ヒアルロン酸タイプ) 約6〜12ヶ月程度(個人差あり) ほぼなし
PRP療法 中長期的な改善が期待される(個人差あり) ほぼなし・当日歩行可

どれが適しているかは、痛みの原因、ダウンタイムを確保できるか、どのくらいの期間で考えるかによって変わります。詳しくは「4つの治療の違い」をご覧ください。

足裏クッション補充注射(コラーゲン誘導タイプ)および足裏クッション補充注射(ヒアルロン酸タイプ)で用いる製剤は、足底部への使用について国内で薬事承認を受けていない未承認医薬品・未承認医療機器です。いずれも医師個人の責任のもとで輸入したものを使用しています。入手経路、国内の承認医薬品等の有無、諸外国における安全性等に係る情報は「足裏脂肪移植の費用」ページに記載しています。

「どのくらい持つか」を知るには、まず現在地を測ること

足裏の脂肪がどの程度残っているかは、超音波(エコー)で確認できます。当院では、レントゲンに加えてエコーで足裏の脂肪の厚みや腱・筋膜の状態を確認します。

出発点がわからなければ、どれだけ変わったかもわかりません。治療を受けるかどうかにかかわらず、現在の状態を数値と画像で記録しておくことには意味があります。

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当院について

リスク・副作用について

足裏脂肪移植は自由診療(保険適用外)です。費用は両側880,000円・片側660,000円(いずれも税込、術後用オーダーインソール作成費用を含む)で、このほかに初診料5,500円・カウンセリング料13,200円・術前検査13,200円・術後用物品セット15,000円・術後消毒セット1,500円・抜糸処置5,500円・術後診察の再診料2,200円×4回がかかります。脂肪を採取する部位には内出血・筋肉痛のような痛み・腫れ・皮膚の凹凸・色素沈着が、移植する部位(足裏)には生着不全(術後の免荷が守られない場合、脂肪が定着せず吸収される可能性)・石灰化・感染・血腫・左右差・シスト(しこり)の形成・術後の一時的な腫れ・痛み・内出血が生じる可能性があります。少なくとも術後1週間は足底の痛みが続きます。本治療は患者様ご自身の脂肪組織を用いるもので、医薬品・医療機器を留置するものではありません。

参考文献

Minteer DM, Gusenoff BR, Gusenoff JA. Fat Grafting for Pedal Fat Pad Atrophy in a 2-Year, Prospective, Randomized, Crossover, Single-Center Clinical Trial. Plast Reconstr Surg. 2018;142(6):862e-871e.

Ruane EJ, Minteer DM, Wyse AJ, Gusenoff BR, Gusenoff JA. Volumetric Analysis in Autologous Fat Grafting to the Foot. Plast Reconstr Surg. 2019;144(3):463e-470e.

Farber SE, Minteer D, Gusenoff BR, Gusenoff JA. The Influence of Fat Grafting on Skin Quality in Cosmetic Foot Grafting: A Randomized, Cross-Over Clinical Trial. Aesthet Surg J. 2019;39(4):405-412.

監修:菊池 守(リカルナクリニック)