足裏脂肪移植を受けられる方・受けられない方
足裏脂肪移植は、すべての足の痛みに適した治療ではありません。痛みの原因が「足裏の脂肪の萎縮」にある場合に効果が期待できる治療です。
ここでは、どのような方が対象になり、どのような場合に別の方法をご提案するのかを整理します。
適応となる主な病態
当院が本治療の適応と考えている病態は、次の3つです。
対象となる方
主に、対症療法では改善しなかった次のような症状・お悩みをお持ちの方が対象です。
- あらゆる靴やインソールを試したが、骨の上を歩いているような痛みが消えない方
- 加齢とともに足の裏の肉が薄くなり、クッション性がなくなったと感じる方
- フローリングなどの硬い床を裸足で歩くと、骨が直接当たるような強い痛みがある方
- 足底腱膜炎と診断されて治療を続けたが改善せず、実際は脂肪萎縮(踵部脂肪褥症候群)が原因である方
- 足底の圧力分散ができず、削ってもすぐにタコやウオノメが再発してしまう方
- 以前は履けたヒールやパンプスが、足裏の痛みや衝撃に耐えられず履けなくなった方
- モートン病などの治療でステロイド注射を繰り返し、副作用で局所的に脂肪が凹んでしまった方
年齢との関係
足裏の脂肪の萎縮は、加齢に伴って起こる変化です。60歳以上の成人の約3分の1、70歳以上の約半数に足底の脂肪パッドの萎縮がみられると報告されています(Minteer ら/Plast Reconstr Surg, 2018)。
「歳のせいだから仕方がない」と考えて我慢されている方が多い領域ですが、原因が脂肪の萎縮であれば、対処できる可能性があります。長引く痛みは我慢せず、一度専門的な診断を受けることをおすすめします。
どのような足の形の方に多いのか
足の痛みそのものは、中高年の約5人に1人が頻繁に経験するとされています(Baron ら/Aesthet Surg J Open Forum, 2020)。
そのなかで、足底の脂肪パッド萎縮に対して脂肪移植を受けた44名を対象に、どのような方に多いのかを検討した報告があります(同)。
| 項目 | 割合・数値(Baron ら 2020) |
|---|---|
| 女性 | 73% |
| 平均年齢 | 61歳 |
| 平均BMI | 26.6 |
| 両足に施術 | 75% |
| 柔らかいアーチ(フレキシブルアーチ) | 41% |
| 過去の足の変形または手術の既往 | 73% |
| タコ(胼胝)あり | 43% |
(出典:Baron ら/Aesthet Surg J Open Forum, 2020。44名の後ろ向き検討)
過去に足の手術を受けた方
上記のうち、73%に足の変形または手術の既往があったという点は見逃せません(Baron ら, 2020)。
足の手術後に足裏の痛みが残っている、変形の治療を受けたが痛みが取れない——そうした経過をたどっている方は、脂肪パッドの状態を一度確認する価値があります。
適応を狭くとらえる必要はありません
同じ報告のなかで、術後12ヶ月時点での痛みの改善と相関した患者要因は、女性であることのみ(P=0.02)でした。BMIと片足か両足かは、改善の経過に影響したとされています。
そのうえで著者らは、足底脂肪パッドの萎縮が疑われる患者は軟部組織の増大術の検討対象になりうると述べています(エビデンスレベル4)。年齢や体型を理由に、ご自身で対象外と判断される必要はない、ということです。
適応の判断は画像で行います
問診だけでは、痛みの原因が脂肪の萎縮によるものかどうかは判断できません。
当院では、足の皮下組織に対して超音波診断装置(エコー)を用い、現在の脂肪の厚みや足底腱膜の状態を「見える化」したうえで適応を判断します。必要に応じて、提携医療機関でレントゲン撮影やMRI撮影を行い、より精密な評価を行う場合もあります。
なお、脂肪パッドの厚みには健常な方でも幅があり、厚みの数値だけで診断が決まるわけではありません。痛みの部位・経過・歩行の状態と画像所見が一致するかを含めて判断します。
別の治療をおすすめする場合
術後4週間の免荷期間を確保できない場合
この治療は、術後4週間、移植部位に強く体重をかけられません。お仕事や生活の都合でこの期間を確保できない場合、移植した脂肪が定着せず、十分な効果が得られない可能性が高くなります。
その場合は、注入直後から歩行できる足裏クッション補充注射(コラーゲン誘導タイプ)や足裏クッション補充注射(ヒアルロン酸タイプ)、施術当日から歩行可能なPRP療法をご検討いただくほうが現実的です。
全身状態から慎重な判断が必要な場合
糖尿病、膠原病、末梢の血流障害がある方、免疫抑制薬やステロイドを使用中の方は、創傷治癒や感染に関する評価を含めて慎重に判断します。術前には足の血流検査と血液検査を行い、必要に応じて主治医の先生と連携させていただきます。
痛みの原因が脂肪の萎縮ではない場合
足裏の痛みには、足底腱膜炎、モートン病、外反母趾、扁平足など、さまざまな原因があります。原因が異なれば、適した治療も変わります。
当院では、外反母趾手術、足趾変形矯正術、陥入爪の処置、オーダーメイドインソール、歩行診断・歩行指導など、足に関する治療を幅広く行っています。まず原因を確定させることを優先します。
まずは負担の少ない方法から試したい場合
そのご希望も大切です。インソールや保険適用となる治療で対応できる場合もありますので、遠慮なくお伝えください。
「対象かどうか」は、ご自身で判断しなくて構いません
この記事に挙げた条件は、あくまで目安です。当てはまるかどうかを迷って受診を先延ばしにするより、画像で確認してしまうほうが早く、確実です。
検査の結果、経過観察が妥当という判断になることもあります。その場合はそのようにお伝えします。
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当院について
リスク・副作用について
足裏脂肪移植は自由診療(保険適用外)です。費用は両側880,000円・片側660,000円(いずれも税込、術後用オーダーインソール作成費用を含む)で、このほかに初診料5,500円・カウンセリング料13,200円・術前検査13,200円・術後用物品セット15,000円・術後消毒セット1,500円・抜糸処置5,500円・術後診察の再診料2,200円×4回がかかります。脂肪を採取する部位には内出血・筋肉痛のような痛み・腫れ・皮膚の凹凸・色素沈着が、移植する部位(足裏)には生着不全(術後の免荷が守られない場合、脂肪が定着せず吸収される可能性)・石灰化・感染・血腫・左右差・シスト(しこり)の形成・術後の一時的な腫れ・痛み・内出血が生じる可能性があります。少なくとも術後1週間は足底の痛みが続きます。本治療は患者様ご自身の脂肪組織を用いるもので、医薬品・医療機器を留置するものではありません。
参考文献
Minteer DM, Gusenoff BR, Gusenoff JA. Fat Grafting for Pedal Fat Pad Atrophy in a 2-Year, Prospective, Randomized, Crossover, Single-Center Clinical Trial. Plast Reconstr Surg. 2018;142(6):862e-871e.
Baron ME, Minteer DM, Gusenoff BR, Gusenoff JA. Patient Selection for Pedal Soft Tissue Augmentation. Aesthet Surg J Open Forum. 2020. doi:10.1093/asjof/ojaa031
監修:菊池 守(リカルナクリニック)