COLUMN

足の健康コラム

足底腱膜炎が治らない方へ|慢性化する原因と再生医療という新たな選択肢

なぜ足底腱膜炎は慢性化するのか

足底腱膜炎の治療を受けているのに、なかなか痛みが改善しない——そんな経験はありませんか。足底腱膜炎は適切な治療で多くの場合改善しますが、一部の方では慢性化し、長期にわたって痛みが持続することがあります。

ピッツバーグ大学のGusenoff BRらが2022年にPlastic and Reconstructive Surgery誌に発表したRCTによると、慢性化した足底腱膜炎では腱膜の厚さが4mm以上に肥厚していることが確認されています。これは単なる「炎症」ではなく、組織そのものが変性している状態を意味します。組織変性が進むと、従来の消炎鎮痛治療だけでは根本的な改善が難しくなります。

さらに見過ごせないのが、ステロイド注射の反復による脂肪パッド萎縮のリスクです。Changらが2022年にJournal of Foot and Ankle Research誌に発表したスコーピングレビューでは、繰り返しのステロイド注射が踵部脂肪パッドの萎縮を招くリスク因子として挙げられています。痛みを抑えるための治療が、かえって足裏のクッションを薄くしてしまう可能性があるのです。

トルコのBelhanらが2019年にActa Orthopaedica et Traumatologica Turcica誌に発表した超音波研究でも、足底腱膜炎患者さんにおける脂肪パッド厚の変化が報告されています。腱膜の肥厚と脂肪パッドの萎縮が同時に進行している場合、腱膜だけを治療しても十分な効果が得られないことが示唆されています。

PRP療法——ステロイドを超えるエビデンス

慢性化した足底腱膜炎に対して、近年注目されているのがPRP(多血小板血漿)療法です。

エジプトのSawanらが2023年にEgyptian Journal of Anaesthesia誌に発表したRCT(対象60名)では、難治性の足底腱膜炎患者さんをPRP群とステロイド注射群に無作為に割り付け、治療効果を比較しました。その結果、VAS(痛みのスコア)とFFI(足機能指標)の両方で、PRP群がステロイド群よりも有意に優れた結果を示しました。

この差が生まれる理由は、治療メカニズムの違いにあります。ステロイド注射は炎症を一時的に抑える「対症療法」であるのに対し、PRP療法は患者さん自身の血液から濃縮した成長因子を用いて、損傷した組織の修復を促進する「組織修復療法」です。慢性化して組織変性が進んだ腱膜に対しては、炎症を抑えるだけでなく、組織の再生を促すアプローチがより効果的であると考えられます。

脂肪注入——慢性足底腱膜炎に対するRCT

ピッツバーグ大学のGusenoff BRらが2022年にPlastic and Reconstructive Surgery誌に発表した研究は、慢性足底腱膜炎に対する脂肪注入のRCTです。

この研究では、慢性足底腱膜炎の患者さんに対して、腱膜周囲への穿通脂肪注入(平均2.6ml)を実施しました。その結果、以下の改善が確認されました。

腱膜の厚さが有意に減少しました(p<0.05)。腱膜の肥厚は慢性化の指標とされており、厚さの減少は組織の修復が進んでいることを示唆しています。また、痛みの改善は12ヶ月間にわたって持続しました(p<0.01)。

さらに、日常活動やスポーツ活動の両面で改善が認められ、患者さんのQOL(生活の質)の向上にも寄与していました。脂肪に含まれる幹細胞や成長因子が変性した腱膜組織の再生を促し、同時に脂肪パッドのクッション機能を回復させるという、複合的な効果が期待されています。

治療選択のポイント

慢性化した足底腱膜炎の治療では、超音波検査による正確な評価が重要です。超音波検査では、腱膜の厚さと脂肪パッドの状態を同時に評価できます。

腱膜の厚さが4mm以上に肥厚している場合は、組織変性が進んでいる可能性があり、従来の保存療法だけでは改善が難しい可能性があります。また、脂肪パッドの萎縮が同時に認められる場合は、腱膜だけでなく脂肪パッドへのアプローチも検討する必要があります。

治療は段階的に行うことが基本です。まずはストレッチやインソールなどの保存療法を十分に行い、それでも改善が見られない場合に、PRP療法や脂肪注入といった再生医療のアプローチを検討するのが一般的です。

まとめ

足底腱膜炎が慢性化する背景には、腱膜の組織変性と脂肪パッドの萎縮という2つの問題が関わっています。これらの問題に対して、PRP療法や脂肪注入といった再生医療的なアプローチが、科学的エビデンスに基づいた新たな選択肢として確立されつつあります。

治療を続けても改善しない足底腱膜炎でお悩みの方は、ぜひ一度RiCarna Clinic(リカルナクリニック)にご相談ください。超音波検査による詳細な評価のもと、慢性化の原因を正確に把握し、お一人おひとりに合った治療プランをご提案いたします。

※本コラムは一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状がある方は必ず医師にご相談ください。