COLUMN

足の健康コラム

インソールで足の痛みが改善しない理由|対症療法と根本治療の違い

インソールのエビデンス——実は科学的根拠が限定的

足の痛みに対して、多くの方がまず試すのがインソール(中敷き)やヒールカップではないでしょうか。靴に入れるだけで手軽に使えるため、整形外科や靴屋さんで勧められた経験がある方も多いかもしれません。

しかし、インソールの科学的根拠は、実は限定的です。デンマーク・オールボー大学のChangらが2022年にJournal of Foot and Ankle Research誌に発表したスコーピングレビューでは、踵部脂肪パッド症候群(HFPS)に対する粘弾性ヒールカップやアーチテーピングの効果を検証したランダム化比較試験(RCT)が存在しないことが明確に指摘されています。

これは、インソールに効果がないということではありません。インソールは足底圧を再分配し、痛みのある部位への負荷を軽減する「対症療法」として一定の役割を果たします。しかし、足裏の脂肪パッドが萎縮しているという根本的な問題がある場合、外からクッションを補うだけでは限界があるということです。

保存療法を続けると足はどうなるか——データが示す事実

「インソールを使っているから大丈夫」と安心していると、実は足の状態が徐々に悪化している可能性があります。

ピッツバーグ大学のMinteerらが2018年にPlastic and Reconstructive Surgery誌に発表した2年間のRCTでは、保存療法群(インソールや靴の調整などの従来の治療を続けたグループ)の足の状態が詳細に追跡されました。その結果は、多くの方にとって意外なものかもしれません。

保存療法群では、右足の足底圧が有意に上昇し(p=0.011)、第3中足骨部の脂肪パッド厚が有意に減少しました(p=0.036)。つまり、保存療法を続けていても脂肪パッドの萎縮は進行し、足裏への圧力は増大していったのです。

この結果は、「何もしないことは現状維持ではなく、悪化を意味する」という重要な科学的事実を示しています。インソールで一時的に痛みが軽減しても、足裏の脂肪クッション自体は薄くなり続けている可能性があるのです。

リポフィリング+インソールの併用——イタリアの研究

では、どうすればよいのでしょうか。イタリア・パヴィア大学のNicolettiらが2014年にThe Foot誌に発表した研究は、一つの解決策を示しています。

この研究では、足底の軟部組織損傷により歩行困難となった4名の患者さんに対し、脂肪注入(リポフィリング)とカスタムインソールを併用した治療が行われました。具体的には、2回の脂肪注入を実施し、各注入後にカスタムインソールを作製するというプロトコルです。

その結果、4名全員が松葉杖なしでの歩行を回復しました。脂肪注入によって失われたクッションを内側から再建し、その上でカスタムインソールによって足底圧を最適に分配する——この「根本治療と対症療法の併用」が、インソール単独よりも優れた結果をもたらしたのです。

対症療法と根本治療の「ベストミックス」

足の痛みへのアプローチは、「対症療法か根本治療か」という二者択一ではありません。それぞれの長所を活かした「ベストミックス」こそが、理想的な治療戦略です。

対症療法(インソール、ストレッチ、テーピングなど)は、日常生活での痛みの軽減に即効性があります。一方、脂肪移植などの根本的なアプローチは、失われた組織そのものを再建することで、長期的な改善を目指します。

大切なのは、まず正確な診断を受け、痛みの原因が何であるかを把握することです。脂肪パッドの萎縮が原因である場合、インソールだけでは十分な改善が得られない可能性があります。超音波検査などで脂肪パッドの状態を評価し、必要に応じて根本的なアプローチを検討することが重要です。

まとめ

インソールは足の痛みに対する有効な対症療法ですが、脂肪パッドの萎縮という根本原因に対処することはできません。研究データは、保存療法だけでは脂肪パッドの萎縮が進行し、足底圧が上昇する可能性を示しています。

インソールを使っても痛みが改善しない方、または一時的には楽になっても再び痛みが戻ってくる方は、足裏の脂肪パッドの状態を評価してもらうことをおすすめします。足の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度RiCarna Clinic(リカルナクリニック)にご相談ください。

※本コラムは一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状がある方は必ず医師にご相談ください。